エピソード1
冬の北海道、暖房なしでも暖かい家
冬の帯広で出会った“太陽のぬくもり”
先日、真冬の帯広へ出張に行ってきました。
キリッと冷え込む、北海道の冬らしい天気。現地調査の仕事だったのですが、想定していたよりもスムーズに進み、予定よりずいぶん早く完了してしまいました。
時間がぽっかり余ってしまい、どうしようかと考えていると、同行していた工務店の方が「今、誰も住んでいない別荘があるんですが、よかったら見ていきますか?」と声をかけてくださいました。現在は空き家状態で、見学も自由にできるとのこと。
これはチャンス!と、案内していただくことに。
——そして別荘に到着し、玄関を開けた瞬間。
「あたたかい!!」
誰も住んでいないはず。暖房が稼働しているはずもない。
それなのに、ふんわりと包み込まれるような暖かさ。
しかもエアコンのような風が出ているわけでもなく、空気そのものがほんのり温かいんです。
「冬の北海道で、こんなことってある!?」
本当に驚きました。
その後、教えていただいて知ったのですが、これは輻射熱によるものだそうです。
この別荘には「OMソーラー」というシステムが採用されていて、軒先から取り込んだ空気を、屋根の頂部に設けたガラスで太陽の熱を利用して温め、その空気を床下の基礎へ送り込んで蓄熱します。そして、建物の躯体自体が温まり、その輻射熱で家全体を優しくあたためる——という仕組み。
つまり、太陽以外の熱源は全くない。
それなのに、真冬の帯広でこの快適さ。
太陽熱の力、パッシブデザインの可能性に、心から感動しました。
「自然の力をうまく活かすだけで、ここまでできるのか。」
身体で実感したことで、私の中でパッシブデザインの捉え方が大きく変わった気がします。
あの日、帯広で出会ったあの“あたたかさ”は、今でも忘れられません。