現在、自邸の設計を進めています。
そこで私が選んだ方針のひとつが、「天井高さはあえて低くする」というもの。

「え、天井は高い方がいいんじゃないの?」
そう思われた方も多いかもしれません。確かに、開放感のある高天井は人気です。不動産広告でも「天井高2.7m!」「吹き抜けあり!」というフレーズはよく見かけます。でも、設計者として長年住宅に関わってきた立場から言うと、天井の高さは「高ければ高いほど良い」というものではありません。
今回は、低天井を意識的に選ぶことのメリットを、設計者目線でお伝えします。
低天井を選ぶ5つのメリット
① 光熱費が下がる 空間の体積が小さくなるぶん、冷暖房の効きが格段に早くなります。エアコンの立ち上がりが速く、エネルギー消費の削減につながります。これは毎月のランニングコストに直結する、現実的なメリットです。
② 階段の段数が少なくなる 1階と2階の床高さの差が小さくなるため、階段の段数を減らせます。昇り降りが楽になり、高齢になっても暮らしやすい設計につながります。
③ 落ち着きと包まれ感が生まれる(ケーブ効果) 人間のスケールに近い天井高さは、心理的な安心感や落ち着きをもたらします。これは「ケーブ効果(洞窟効果)」とも呼ばれる現象で、リビングや寝室など、くつろぎを重視する空間では特に有効です。
④ 建築コストが下がる 壁の高さが減ることで、構造材・断熱材・仕上げ材の量がすべて少なくなります。シンプルに、高さに比例してコストが下がります。
⑤ 耐震性能が上がる 建物の重心が低くなるため、耐震性能の向上にも寄与します。地震大国・日本において、これは無視できないポイントです。
「低さ」を活かす設計の工夫

ただし、低天井だけだと圧迫感が出ることも事実。そこで私の自邸では、意図的に「高い場所」と「低い場所」を混在させる設計を取り入れています。
低い天井を経験した後に高い空間へ移動すると、その開放感が何倍にも感じられます。コントラストこそが、空間に豊かさをもたらすのです。
まとめ:天井高さは「使い分け」が設計の肝
高天井と低天井に、優劣はありません。
部屋の用途、広さ、そしてそこで暮らす人のライフスタイルによって、最適な高さは変わります。「なんとなく高い方がいい」という思い込みを手放して、自分たちの暮らしに本当に合った空間を選ぶこと。それが、設計事務所と一緒に家をつくることの醍醐味だと思っています。





