間取りだけを先に考えると、打ち合わせを重ねるうちに「結局何がしたいのか」が見えなくなってしまいます。私たちが自宅を設計するときも、お客様の家を設計するときも、やることは同じ。まず「どんな暮らしをしたいか」を書き出すことから始めます。
なぜ間取りから始めると迷走するのか
「リビングは広くしたい」「収納を増やしたい」――こうした要望は、本来の目的ではなく手段です。手段を先に積み上げても、根拠のない選択が増え、最終的に「何のための家か」が曖昧になります。
設計には順番があります。暮らしのイメージ → 必要な機能・空間 → 間取り・設備の選定、という流れで考えることで、すべての選択に理由が生まれます。
設計前に整理する3つのステップ
Step 01
どんな暮らしをしたいかを書き出す
日常のシーンを思い浮かべながら、感情ベースで書き出します。「薪ストーブの炎を見ながら冬の夜を過ごしたい」「きれいな景色を見ながら縁側でゆっくりしたい」のように、具体的な場面で描くと伝わりやすくなります。
Step 02
欲しい家の条件を整理する
暮らしのイメージから、必要な性能・設備・空間の要件を抽出します。「冬暖かく夏涼しい」→パッシブ設計、「車いすになっても住み続けたい」→廊下レスまたは広い廊下・バリアフリー、のように紐づけます。
Step 03
ゾーニング・単位空間に落とし込む
要件が揃って初めて間取りの検討が始まります。「南側に大開口窓+薪ストーブを生活の中心に」「寝室とトイレを近づける」など、理由のある配置が自然とできあがります。
実例:私たち自身の自宅設計での要件リスト
実際にどのような要件が出てくるかを、私たち自身の自宅設計を例にご紹介します。
快適性・温熱環境
- パッシブ設計による冬暖かく夏涼しい家
- 薪ストーブの輻射熱による暖かさ
- トリプルガラス窓・防犯高め窓
- カーテン不要の窓計画
眺望・屋外との繋がり
- 南面大開口窓で景色を楽しむ
- 縁側・屋外デッキで外ご飯
- わくわくするアプローチ
- モッコウバラなど植栽計画
キッチン・家事動線
- 2人で料理できるカウンターキッチン
- ダクトを天井内に収納(壁付き)
- 食洗器・シンクと調理台一体型
- 室内物干しスペース
収納・玄関まわり
- 収納面積12%以上を目標
- キャンプ・釣り道具の収納
- 傘収納・コート掛け・鍵収納
- レターパック対応郵便受け
バリアフリー・将来対応
- 廊下レスまたは広い廊下
- 車いす用スロープ
- 広いトイレ・寝室から近い配置
- リフォーム不要で自然に対応
外構・メンテナンス
- 落ち葉・草むしり最小限
- 自転車置き場2台以上
- 雨でも濡れない駐車・駐輪
- 外壁に配線・雨どいを目立たせない
要件からゾーニングへ — 具体的な変換例
| 暮らしの要件 | 設計への変換 |
|---|---|
| 薪ストーブを暮らしの中心に | 南側に大開口窓+土間玄関とストーブをどこからでも見えるよう配置 |
| 夜トイレに行きやすい | 寝室とトイレの位置関係を最優先に検討 |
| 車いすでも暮らしやすい | 廊下レスまたは幅広廊下・広いトイレ・スロープ設置 |
| ダクトを見せたくない | 壁付きキッチン採用またはダクトを天井内に収納 |
| 2人で料理したい | カウンターキッチンで横並び作業スペースを確保 |
| 収納を十分確保 | 収納面積を床面積比12%以上に設定して計画 |
この整理があって初めて、間取りの検討に入ります。ここを飛ばして間取りだけで進めると、選択の根拠が曖昧になり、打ち合わせのたびに方向が変わる「迷走」が起きやすくなります。
まとめ:家づくりの前にやっておくこと
間取りで迷走しないためには、まず「どんな暮らしをしたいか」を言葉にすることが大切です。設計事務所に相談する前でも、ノートに書き出すだけで整理が進みます。
また、打ち合わせを始める前にできるだけ多くの住宅を見ておくこともおすすめします。モデルハウスでも見学会でも、実際の空間を体で感じることで「自分が心地よいと感じるもの」の解像度が上がります。
「暮らしの要件を一緒に整理したい」という方は、お気軽にご相談ください。
初回のヒアリングから、設計の方向性を一緒に考えます。
