日常が主役になる家。平屋フルリノベーションのその後
先日、前職で設計を担当させていただいたフルリノベーションのお宅へお邪魔してきました。 そこはアトリエや店舗ではなく、ご家族が「普通に生活されている」おうち。しかし、一歩足を踏み入れると、まるでおしゃれなカフェのような心地よい空間が広がっていました。
独立した今も大切にしている私の設計テーマ、「ふだんがいちばん」。 日常の何気ない時間がもっとも豊かであるように——。そんな想いが形になった住まいの、暮らしの様子をご紹介します。
「見せる収納」と「CGパース」で理想のキッチンを形に
今回の設計のポイントは、ご夫婦それぞれのこだわりをどう共存させるかでした。
- 奥様: お皿や調理道具を隠すのではなく、インテリアとして「飾りたい」
- 旦那様: 大好きな読書を心ゆくまで楽しみたい
特にキッチン周りについては、平面図だけでは完成形がイメージできないという奥様のために、あえて色を付けないCGパースを何パターンも作成しました。
色という情報を取り除くことで、空間の構成や動線、広がり方や使い方の想像に集中していただくためです。
何度も打ち合わせを重ねる中で、「奥様にとっての理想のキッチン・ダイニング」を一緒に見つけ出すことができました。
そうして完成したのが、お気に入りの道具たちに囲まれた、この造作飾り棚のあるダイニングです。
パッシブデザインで生み出す、23坪を感じさせない開放感
この住宅は、延床面積23坪という限られたサイズ(狭小住宅)です。しかし、現地を訪れて改めて感じたのは、数字以上の圧倒的な「広がり」でした。
その秘密は、構造と環境を味方につけた設計にあります。 耐震壁の影響でどうしても生まれてしまうデッドスペースを逆手に取り、パッシブデザインの考え方を導入。南面の大きなFIX窓からたっぷりと太陽の光を採り込み、窓辺を「ベンチ」兼「ヌック(こもり部屋)」として活用しました。
陽だまりの中で本を読めるこの場所は、旦那様にとっても最高のリラックススペースになっています。
素足で感じる、無垢杉フローリングの心地よさ
空間の広がりだけでなく、肌に触れる素材感も快適さを左右する大切な要素です。 床一面に採用した無垢の杉材は、年月を経てさらに風合いを増し、足裏に伝わる柔らかさと温もりが室内を優しく包み込んでいました。
「狭い」という制約を「工夫」で解消し、住まう人の個性が光る家。 あらためて、設計という仕事の喜びを実感した一日でした。





